前回の記事で、「不安なときに、その『不安』を忘れようとすると、かえって不安で心がいっぱいになってしまう。」というお話をしました。「忘れよう」とすると、かえってその「忘れよう」としているものに、意識を集中してしまうからです。
それでは、どうすれば良いのでしょうか?
前回の記事では、「何か別の感情で、『不安』な気持ちを上書きしてしまう」という方法を、ご紹介しました。
しかしそれでは、何か自分の気持ちを騙しているだけで、本当に「不安」を消し去っているわけではないように思ってしまう方もいらっしゃるかもしれません。
そうですね。しかし、「不安」を本当に消し去ってしまうことは、困難です。「不安」は『不安』として、その役割を持っている、つまり自分を守ってくれている物ですから。
完全に消し去ってしまうのではなく、「ちょっと、脇に置いてしまう」という感覚です。つまり、「不安」はそのまま受け入れて、その「不安」によって引き起こされる、不快な感情だけを緩和していこうということです。
どうやったら、その「不安」な感情を、脇に置いておくことが出来るのでしょうか?
それは、「『今ここ』に集中する」、と言うことです。
前回お話しした、気分転換のようなものも、その「今ここに集中する」方法の一つです。
私たちは、たとえ不安に思っていても、常にその「不安」に向き合っているわけではありません。
往々にしてその「不安」は、「やってくるかもしれない何時か」の事であって、今現在起きているわけではありません。または、「過ぎ去ってしまった過去」に起きたことが、原因になっている場合も有ります。
「過去」は、既に過ぎ去ってしまったものです。そして「未来」は、やってくるかどうかもわかりません。
その様な不確定なものに、こころを占領されてしまうのは、意味の無いことです。
私たちが生きることが出来るのは、「今ここ」しかありません。
私たちの自由になるのは、「今ここ」だけです。そして、私たちに影響を与えてくるのも、「今ここ」しかありません。
「今ここ」で、私たちの目の前に有るものは、何でしょうか。
それは、私たちがやるべきこと、やらないといけないこと。そして、私たちが感じている感情です。
私たちの感覚は、すべて目の前に有るものに向けられています。そして私たちの思考は、目の前に有るものをどうするかで、占められています。
つまり、「不安」を含め、「今ここ」に有るもの以外のことに注意をはらっている暇など有りません。
私たちが生きることが出来る世界は、「今ここ」しかありません。その「今ここ」に、しっかりと意識を集中しましょう。
忘れ物をしてしまうのも、うっかりミスをしてしまうのも、意識が「今ここ」から離れてしまっているからです。意識がふわふわと、ありもしない過去や未来へと、彷徨ってしまっているからです。
こころが「不安」に捕らわれてしまうのも、意識が「今ここ」から離れてしまっているからです。
「今ここ」に意識を集中して、今やることだけを考えてください。
それが、不安を一時脇にどけておくための手段になります。